[プロバレエダンサーから鍼灸師へ]T.I さん(3年生)

バレエダンサーへの憧れを現実に

3歳からバレエを始め、ロシアのバレエ団の舞台映像を観るうちに「自分もこんなふうに踊りたい」と思うようになりました。中学3年生のときにプロのバレエダンサーを目指すためのスクールに進学することを決め、その後はイギリスのバレエ学校に留学し、帰国して現在のバレエ団に所属しています。2016年にプロのバレエダンサーになりました。

鍼灸でケガが回復

本番を1カ月後に控えたリハーサル中に右足首を捻挫してしまいました。捻挫は子供の頃から何度も経験していますが、こんなにひどく痛めたのは初めてで、しばらく歩くこともできない状態でした。また踊れるようになるのか非常に不安でしたが、バレエ団の先輩が通っている鍼灸院を紹介してもらい、鍼灸治療を受けることにしました。
最初は週3回ほど治療に通い、足首を固定するテーピングのやり方も教えてもらいました。徐々にリハーサルに参加できるようになり、1カ月後の本番の舞台で踊ることができたときには感動しました。
バレエにケガはつきものです。ケガに苦しんでいる仲間も多く、「治療ができるようになりたい」という思いは以前から持っていました。私自身が鍼灸治療によって舞台に戻ることができた感動をきっかけに、鍼灸師になることを決めました。

夜間特修コースを選んだ理由

私のケガを見てくれた鍼灸の先生は東京医療専門学校の卒業生です。先生に相談したところ、鍼灸師になるには養成校に3年間通って国家試験に合格しなければならないと知りました。「始めるなら早いほうがいい」と思い、さっそく学校説明会へ行きました。東京医療専門学校の灸の実技授業を見学した際に「この学校ならしっかり学べそうだ」と感じ、出願の手続きをしました。
仕事では所属バレエ団のほかに外部からゲストとして招かれ公演に立つことがあり、それが全体の8割を占めます。また、バレエは基本的に昼間にリハーサル、土日に公演が行われます。夜にリハーサルが行われる公演は、学生の間はお断りすることにしました。土曜日の授業を受けられるか心配でしたが、夜間なら通学が可能です。とにかく3年間、夜間特修コースで頑張ることにしました。

帰宅後の復習

平日は仕事をしたあと学校へ行き、22時半頃に帰宅します。その後、授業で学んだことを自分なりの言葉でまとめた資料をつくって復習します。パソコンで、Wordを使って入力します。自分の言葉でまとめることによって学んだ内容が吸収しやすくなるようです。分からない箇所は教科書を見て確認します。睡眠時間を多少削ることになりますが、なんとかこなしています。
作成した資料のデータはスマートフォンに転送して移動時間や空き時間などにながめます。試験前はその資料を一通りながめます。不得意分野の対策としては、分からない箇所は自分なりに考えたあと、柔道整復師や看護師の資格を持つ同級生に教えてもらいます。

鍼灸でバレエダンサーを支えたい

ケガで踊ることをあきらめざるを得なくなったバレエ仲間を何人も見てきました。私が鍼灸で舞台に戻ることができたように、卒業後は本業のバレエダンサーを続けながら、鍼灸で周りのダンサーを支えたいです。バレエダンサーの心身を一番理解できるのは、やはりバレエダンサーだと思います。身体的に踊れなくなる日が来たら、鍼灸を本業にするつもりです。

この授業が魅力!

東洋医学系の科目が好きです。3年生で習った「東洋医学概論」の岡田 智和 先生は1・2年生で得た知識のまとめ方を示してくださり、日常生活でのたとえも挙げて分かりやすく教えてくださいます。

自分の治療を兼ねた実技練習

同級生が実技授業のときの私の様子を見て 「目の付け所が違う」 と評したそうですが(笑)、特に意識しているわけではありません。しいていえば、自分の感覚に置き換えて考えます。たとえば足首の捻挫で治療を受けるとしたら、どの動きでどう痛み、筋肉の硬結がどこに現れるかなどを推測します。
学校以外の実技の練習としては、就寝前に自分の身体に鍼を打つことを習慣にしています。バレエのリハーサルで使った自分の身体に対する治療と鍼の実技練習を兼ねています。身体の状態はその日によって違うので、10分程度で終わるときもありますし、1時間かかるときもあります。

1・2年生へのメッセージ

私の場合、1年生のときは「とにかく覚えること」を心がけました。2年生になると覚えたことが使えるようになり、その先につながります。
東洋医学系の科目は、経穴と五行色体表は完璧に覚えておけば、かなり楽になります。私は朝晩、経脈ごとに経穴名を書いて唱えることを繰り返し、完全に覚えるまで続けました。五行色体表は家の壁に貼り、毎日それを見て読み上げました。

入学を検討している方へ

「しっかり勉強して資格を取るぞ!」という学習意欲の高い同級生の影響を受けながら、東京医療専門学校で多くのことを学びました。
鍼灸師になるには覚えなければいけないことがたくさんありますし、鍼灸は身体を使って行うものですから、「挑戦するなら早めに」と伝えたいです。やらない理由はいくらでもあります。やらない理由を考えるよりも、やったほうがいいです。

  • インタビューは2022年に実施しました。